3500K 昼のシーン

エルプラザ(L PLAZA)
新宿エルタワー地下2階

外光が差し込まない地下空間に、
光で自然な時間の移ろいを再現。
人々を惹きつける
居心地の良いスペースへ。

新宿駅西口から直結の高層オフィスビル、新宿エルタワー。周辺のオフィスビルで働く人々が行き交うビルです。今回、地下2階レストランフロア『エルプラザ』の竣工から約30年ぶりのリニューアルプロジェクトで、共用部へ照明コントロールシステム「TRee」を導入いただきました。今回関係者を交えて、プロジェクトのお話を伺いました。

2700K 夜のシーン

新宿エルタワー地下2階
飲食フロア共用部の改装計画について、
コンセプトをお聞かせください。

株式会社船場 芳賀 咲歩様
株式会社船場
EAST事業本部 設計統括部
設計第3DIV. 設計第1チーム

芳賀 咲歩 様

芳賀様:新宿は人が多く行き交う活気のある街ですが、そんな新宿の中で一休みできるような場所にしたい、というのがコンセプトの一つです。新宿西口はオフィスやショッピングセンターなどが入り交ざったような場所で、近くに自然やグリーンがほとんどありません。さまざまな人が羽を休められるような、新宿西口の新たなスポットとして利用していただければと思い、空間自体はグリーンや木を使って、ナチュラルな雰囲気にしています。

 照明については、地下空間で外光が全く入らないので、昼と夜を照明により、雰囲気を変えることによって、時間の流れを感じていただき、特に昼間は明るく活気のある空間にして、集客にも結び付けたいと考え、調光調色で照明シーンを変えるよう計画しました。

お客様の計画に対して
どのような提案をしましたか?

コイズミ照明株式会社 金住 幸治
コイズミ照明株式会社
首都圏市場開発統括部
店舗営業部 第1開発室

金住 幸治

金住:最初に昼と夜でシーンを分けたいというご要望をいただきましたので、スケジュール設定が可能で自動制御できるものという条件で絞り込んでいきました。制御システムの中でもTReeというスマートフォンのアプリで細かな制御ができるものがありましたので、それをご提案しました。TReeは戸建ての住宅向けに開発されたものですが、新宿エルタワーのような大きな案件でも充分に対応可能であることを、船場様にご説明させていただきました。その後、ショールームにお越しいただいて、色温度や照度がどのように変化するのかを一緒に確認させていただきました。

TRee導入の理由について
お聞かせください。

株式会社船場 芳賀 咲歩様

芳賀様:以前も調光調色で昼夜のシーン分けをお願いして、クライアント様などから好評だったということもあり、コイズミさんにお声掛けしました。

 前回は別の制御システムでしたのでTReeの導入は今回がはじめてでした。エルタワーは照明を1階の中央管理室で管理されているのですが、TReeは大幅にビル全体の制御を変えることなく、今回の地下2階のフロアだけの制御が可能であり、管理の方にもスマートフォンの操作であまりご負担なく運用していただける、ということが大きなポイントとなって導入を決めました。

 あとは、アプリで調光・調色など細かなコントロールもできるとのことでしたので、一旦完成した後も、お客様の方で調整がしたいときにアプリで簡単に変更することができ、お客様の運営の幅や自由度も広がると思いTReeの導入をお願いしました。

ご提案した照明計画について
教えてください。

コイズミ照明株式会社 金住 幸治
コイズミ照明株式会社
首都圏市場開発統括部
LCR東京 第2設計室

伊藤 恵

伊藤:ベースダウンライトで通路を均一に明るくし、ユニバーサルダウンでフロアのインフォメーション前や店舗前を重点的に明るくしています。長い通路の中央には、船場様デザインの吊り造作照明でリズムを作っています。それらは全て調光調色の器具で計画しており、TReeへつなげています。接続した照明器具は合計1044台です。私がこれまで担当したTRee導入案件の中で、最も規模が大きいものでした。制御関係の専門部署であるデジタルソリューション室とも連携しながら、しっかりと確認を行ってご提案をさせていただきました。

船場様設計の吊造作。 上下にやわからく間接光が広がります。

船場様設計の吊造作。 上下にやわからく間接光が広がります。

伊藤:TReeのスケジュールとシーン設定ですが、芳賀様からお店の営業時間を伺って施設の人の動きに合わせた設定を計画し、ご提案を行いました。昼のシーンから夜のシーンへと明るさと光の色が変わる際には、パッと瞬間的に変わるのではなく、20分のフェードをかけていて、利用者の方が気付かないぐらいゆっくりとシーンが変化するよう設定しました。

苦労した点や、印象に残っている点
などについて教えてください。

芳賀様:調光調色の制御システムを使用するとなると、コスト面での調整が大変になります。TReeは比較的安価に導入できるということもあり、安心して進めることができました。

 他にも既存の建物の改修でしたので、天井の懐の高さが取れない部分が多くあり、照明器具の埋込み高さに合うよう配置を調整するのが大変でしたが、その調整については伊藤さんにご尽力いただいて施工することができました。

検証会の様子。
船場様を含め関係者で集まり、
実機での光を確認しつつ話し合いを重ねながら詳細を詰めていきました。

金住:器具台数が多く規模の大きな案件でしたので、現場での調整に時間がかかり苦労しましたが、制御設定完了後、実際に色温度や調光率が変わり、シーンの変化を確認したときには、この大規模な空間でイメージ以上の照明演出効果を感じました。もちろんリニューアル前と比べて内装も変わりましたが、照明によってこれほど空間に違いが出たのが非常に印象的でした。

伊藤:リニューアルということで、造作部分は以前からある天井の折上げ造作や間接照明の造作を利用しながら一部新規のものを追加するような形でした。船場様に間接照明の設置高さや取付方法を調整いただき、既存の造作を利用しながらも綺麗に光を伸ばすことができました。納まりを決定していく過程で、DIALuxによる3Dシミュレーションや、船場様にもご参加いただきモックアップを用いた実機検証会を実施しました。一か所ずつ細かく納まりを詰めていった点が、全体として上手く納めることができたポイントだと思います。

TRee導入後の反響や、
実際に現場を見られてのご感想など
教えてください。

芳賀様:クライアント様からは、地下空間でありながら、照明シーンが切り替わることで時間の流れを感じることができる、自然と気持ちもお昼の活動的なモードから夕方のゆったりとしたモードに切り替えられる、というお話しをお伺いしました。クライアント様に実際に体感して効果を感じていただき感動していらっしゃったので、私もその様子を拝見して安心しました。

 また、工事前は照明が若干薄暗かった印象もあったのですが、施工後はとても明るく雰囲気もガラッと変わったので、人通りは確実に増えているのではと思います。

今回のプロジェクトを通して、
照明について今後の取り組みや考えなど
ございましたらお聞かせください。

芳賀様:今回、照明シーンが人に与える心理的効果の大きさを私自身も再確認しました。こういった光の演出や効果を、口頭だけではクライアント様へなかなか伝えきれないと感じています。コイズミさんでもBIMのRevitファミリデータの配信をされており、弊社でも3Dを使った設計に近年力を入れているので、3Dで空間やシーンの雰囲気を確認できるようにしていきたいと思います。

 BIMはVRへの活用も可能なので、クライアント様に施工前の段階でリアルな空間を体感していただきながら提案の説明を行うことができ、空間の更なるブラッシュアップにもつながると思います。照明が空間に与える効果は大きいと思いますので、照明演出の説明などでも今後実践していけたらと思っています。

船場様のご意見に対して、どのような
照明メーカーでありたいと思いますか?

金住:私の立場としましては、やはり営業が会社の窓口になりますので、お客様の求めるイメージやニーズをしっかりと差異が無いように汲み取って今後提案していきたいと思います。また、今回TReeによって空間のイメージが大きく変わることを再認識しましたので、今後もさまざまな制御関連の提案を積極的に展開していきたいと思います。

伊藤:お客様には照明に詳しい方も多くいらっしゃって、制御を入れたいというご要望を最初にいただくことも多いです。ご要望いただいた内容を踏まえた上で、制御に関してはTReeをご提案すべきか、DALIなのかなど慎重に検討し、適切な提案を今後もしていきたいと思います。また、お客様の空間にいる人や使う人、運営する人の立場になって、より使いやすい照明の提案をしていきたいと思います。

[ 主な使用器具 ]